2024年本屋大賞を受賞し、シリーズ累計80万部を突破した『成瀬は天下を取りにいく』。「かつてなく最高の主人公現る!」と評されるこの作品は、なぜこれほどまでに多くの読者を魅了するのでしょうか。
この記事では、本作のあらすじを簡単にわかりやすく解説し、魅力的な登場人物たち、そして読者が「面白い!」と感じる3つの理由を徹底的に紐解いていきます。
📖『成瀬は天下を取りにいく』基本情報
- 著者: 宮島未奈(みやじま みな)
- 出版社: 新潮社
- 発行年: 2023年3月17日
- ジャンル: 連作短編集・青春小説
- 舞台: 滋賀県大津市
- ページ数: 208ページ(単行本)
- 読了時間目安: 約3〜4時間
🏆 主要受賞歴
- 2024年本屋大賞 受賞
- 第39回坪田譲治文学賞
- 第20回女による女のためのR-18文学賞(史上初のトリプル受賞:大賞・読者賞・友近賞)
- ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR 2023 小説ランキング1位
- キノベス!2024 第1位
- 史上初の17冠達成(2024年12月時点)
📑 成瀬は天下を取りにいくのあらすじを簡単に【5段階で解説】
【超簡単版・50文字】
滋賀県の中学生・成瀬あかりが「天下を取る」ために、西武大津店通い、M-1出場など、周囲を巻き込みながら突き進む青春物語。
【簡単版・150文字】
2020年、滋賀県大津市に住む中学2年生の成瀬あかりは「200歳まで生きる」という目標を掲げ、「天下を取る」ために様々な挑戦を続ける型破りな少女。コロナ禍で閉店する西武大津店に毎日通い、幼馴染の島崎とM-1グランプリに出場し、地域の人々と交流しながら、自分らしく生きる道を突き進んでいく。
【詳細版・300文字】
14歳の成瀬あかりは、幼馴染の島崎みゆきに「わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と突然宣言する。コロナ禍で閉店を控える西武大津店に毎日通い、ローカル番組の中継に映り続けようとするが、なぜかテレビは成瀬を避けるように放送する。次に彼女は「お笑いの頂点を目指す」と宣言し、島崎を巻き込んで漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成。M-1グランプリへの出場を決意する。膳所高校に進学後も、かるた大会で広島の高校生・西浦航一郎と出会い、地元のお祭りの司会を務めるなど、成瀬の挑戦は続いていく。高校3年の夏、島崎の東京転居が決まり、初めて動揺する成瀬の姿が描かれる。
【完全版・600文字】
本作は、滋賀県大津市を舞台に、主人公・成瀬あかりの中学2年生から高校3年生までの成長を描いた連作短編集です。
2020年夏、中学2年生の成瀬は幼馴染の島崎みゆきに「この夏を西武に捧げる」と宣言。コロナ禍で閉店を控える西武大津店に毎日通い、ローカル番組「ぐるりんワイド」の中継に映ろうとします。西武ライオンズのユニホームを着て通い続けるも、テレビカメラは不思議と成瀬を避けるように放送。それでも諦めず2学期が始まっても通い続けます。
次に成瀬は「お笑いの頂点を目指す」と宣言し、島崎とコンビ「ゼゼカラ」を結成。M-1グランプリ出場を目指して漫才の練習を始めます。
膳所高校に進学後、成瀬は坊主頭になって登場。同級生の大貫かえでは、中学時代に苦手だった成瀬と再び同じクラスになり戸惑います。高校2年生のとき、全国高校かるた大会で広島県代表の西浦航一郎が成瀬に一目惚れし、琵琶湖の観光船ミシガンでデートをします。
高校3年の夏、地元自治会の「ときめき夏祭り」の総合司会を務める成瀬と島崎。しかし島崎の父親の転勤で東京へ転居することが決まり、成瀬は初めて大きな動揺を見せます。
物語全体を通して、成瀬の「天下を取る」という目標が、実は日常の中で全力で生きることそのものであることが浮かび上がってきます。
👥 成瀬は天下を取りにいくの登場人物全解説
主要キャラクター
成瀬あかり(なるせ あかり)
- 年齢: 中学2年生→膳所高校3年生(14歳〜18歳)
- 出身: 滋賀県大津市
- 性格:
- 周囲の目を気にせず、興味の赴くまま突き進む型破りな性格
- マイペースで独自の価値観を持つ
- 物事に全力で取り組む行動力の持ち主
- 「愛嬌に欠ける」と評されることもあるが、本人は気にしない
- 特徴的な言動:
- 「200歳まで生きる」という壮大な目標
- 「先のことなんてわからない」という哲学
- 「二百歳まで生きた人がいないのは、ほとんどの人が二百歳まで生きようと思っていないからだと思うんだ」
- 外見: 高校1年生のとき坊主頭になる
島崎みゆき(しまざき みゆき)
- 関係性: 成瀬の幼馴染(幼稚園からの付き合い)
- 年齢: 成瀬と同学年
- 性格:
- コミュニケーション能力が高く友人が多い
- 常識的で周囲に気を配るタイプ
- 成瀬に振り回されながらも支え続ける
- 役割: 多くの章で語り手を務め、読者の視点役となる
- 心情: 「凡人の自分は成瀬を見守るのが務め」と考えている
- 進学先: 大津高校(成瀬とは別の高校)
- その後: 高校3年の夏に父親の転勤で東京へ転居、東京の大学へ進学予定
稲枝敬太(いなえ けいた)
- 年齢: 1977年生まれの社会人(40代)
- 職業: 大阪のWeb会社勤務
- 役割: 第3章「階段は走らない」の語り手
- ストーリー:
- SNSで西武大津店の閉店を知る
- 小学校時代の同級生たちと偶然再会し、同窓会を企画
- 小学6年の冬休み中に転校し音信不通となった「タクロー」を探す
- Webサイトを制作して呼びかけ、閉店の日に再会を果たす
吉嶺マサル(よしみね まさる)
- 関係性: 稲枝の旧友
- 職業: 弁護士
- 性格: 地元活動に熱心
- 役割: 稲枝と共に「タクロー」を探す
大貫かえで(おおぬき かえで)
- 年齢: 高校1年生(成瀬の同級生)
- 学校: 膳所高校
- 性格:
- 承認欲求が強い
- 中学時代は成瀬を苦手としていた
- クラスカーストの最下層にいたという自覚がある
- 役割: 第4章「線がつながる」の語り手
- 成長: 成瀬の存在を通じて自分自身と向き合うことになる
西浦航一郎(にしうら こういちろう)
- 出身: 広島県の高校生
- 年齢: 高校2年生
- 特技: かるた(全国高校かるた大会の広島県代表)
- ストーリー:
- かるた大会で滋賀県代表の成瀬に一目惚れ
- 幼馴染の中橋結希人の協力を得てデートの約束を取り付ける
- 琵琶湖の観光船ミシガンに成瀬を案内する
- 役割: 第5章「レッツゴーミシガン」の語り手
サブキャラクター
- 中橋結希人: 西浦の幼馴染、西浦の恋を応援する
- 遥香・瑞音: 島崎のバドミントン部の友人
- みゆきの母親: 島崎家の母親、成瀬をよく知る
- タクロー: 稲枝が探す小学校時代の同級生、SNSで再会を果たす
💡成瀬は天下を取りにいくを読者が面白いと感じる3つの理由
【理由1】予測不能な主人公・成瀬あかりの圧倒的な魅力
成瀬あかりというキャラクターは、従来の青春小説の主人公とは一線を画す存在です。
ぶっ飛んでいるのに理屈が通っている「成瀬節」
成瀬の言動は一見突飛に見えますが、実は明確な論理と彼女なりの哲学が貫かれています。
「二百歳まで生きた人がいないのは、ほとんどの人が二百歳まで生きようと思っていないからだと思うんだ」という言葉は、「思考が行動を規定する」というシンプルな真理に基づいています。
西武百貨店への漫才、M-1への挑戦、かるたへの取り組みなど、一見脈絡がないようでいて、「好奇心に忠実に、自分に正直に生きる」という一貫した行動原理があります。
「空気を読まない」ではなく「空気を変える」存在感
成瀬は単に空気を読まないのではなく、周囲の空気を良い方向へと変えていく力を持っています。
停滞した空気や、周りに合わせて行動してしまう人々の心を揺さぶり、「自分ももっと自由に生きていいんだ」という気づきを与える存在です。
現代社会は、SNSの普及などにより目に見えない同調圧力が強く働く傾向がありますが、成瀬はそうした圧力とは無縁で、自身の道を堂々と進んでいきます。
【理由2】多視点構造がもたらす立体的な物語体験
本作は各章で語り手が変わる連作短編集の形式をとっており、この構成が物語に独特の魅力を与えています。
様々な視点から見る成瀬の多面性
- 島崎から見た成瀬: 幼馴染として彼女の突飛な行動に振り回されながらも、深い愛情を持って見守る視点
- 大貫から見た成瀬: 苦手意識を持ちながらも、徐々に彼女の生き方に影響を受けていく視点
- 西浦から見た成瀬: 一目惚れした相手として、憧れと尊敬の眼差しで見る視点
- 稲枝から見た成瀬: 外伝的な視点で、地域と時代を結ぶ存在として捉える視点
この多視点構造により、読者は成瀬というキャラクターを立体的に理解することができます。
「見る側」と「見られる側」の交差
各章で語り手が変わることで、読者は「見る側」と「見られる側」の両方を体験します。
これにより、自分自身の生き方を他者の視点から見つめ直すきっかけを得ることができるのです。
【理由3】時代性にハマった作品テーマ
『成瀬は天下を取りにいく』が多くの読者から支持を集める背景には、現代の社会情勢や若い世代の価値観に深く響く作品テーマがあります。
正解のない時代に響く「自分らしく生きる」というメッセージ
現代社会は、終身雇用制度の崩壊、多様な働き方の登場、SNSによる情報過多と他者との比較など、個人は常に選択を迫られ、生き方に迷いを感じやすい状況にあります。
かつてのように「いい大学に入って、いい会社に入れば安泰」というモデルが崩壊し、若者は「何を目標にすればいいのか」「どう生きるのが正解なのか」という問いに対して、明確な答えを見つけにくい時代に生きています。
そんな中で、成瀬あかりは、世間の評価や常識に一切囚われず、ひたすらに「自分がやりたいこと」「面白いこと」を追求します。
彼女の生き方は、「外に正解を求めるのではなく、自分自身の内側に軸を持つことこそが、この不確実な時代を生き抜くための唯一の正解である」というメッセージを力強く提示しています。
「平凡」と「特別」を行き来する構成がリアル
成瀬あかりの行動は非常に個性的で「特別」ですが、彼女が暮らすのは滋賀県大津市というごく一般的な地方都市であり、彼女自身も学校に通う「平凡」な日常を送っています。
この「平凡」と「特別」が絶妙なバランスで描かれている点が、読者に強いリアリティと共感をもたらします。
学校での友人関係、地域のお祭りなど、身近な出来事が舞台となっているため、読者は彼女の「ぶっ飛んだ」行動を、「もし自分の身近に成瀬のような人がいたら?」という視点で、よりリアルに想像することができます。
Z世代の理想像を体現
Z世代(概ね1990年代後半〜2010年代前半生まれ)は、多様な価値観を肯定し、個性を重視する傾向が強いと言われています。
成瀬あかりの「不器用ながらも自分を貫く強さ」は、まさにZ世代が理想とする生き方の一つの形を体現しています。
従来の画一的な「成功」のイメージではなく、人それぞれに異なる「成功」の形があることをZ世代は認識しています。成瀬が追求する「天下を取る」という目標が、世俗的な名声とは異なる自分なりの「最高の状態」である点は、Z世代が目指す多様な生き方やキャリアパスを肯定するものであり、強い共感を呼んでいます。
🎬 成瀬は天下を取りにいくの章構成と見どころ
第1章:ありがとう西武大津店
時期: 中学2年生の夏休み(2020年・コロナ禍)
語り手: 島崎みゆき
見どころ: 成瀬の突飛な行動の原点。コロナ禍という時代背景と、地域への愛着が丁寧に描かれる。
第2章:膳所から来ました
時期: 中学時代
語り手: 島崎みゆき
見どころ: 漫才コンビ「ゼゼカラ」結成。成瀬と島崎の掛け合いが最高に面白い。
第3章:階段は走らない
時期: 外伝的作品
語り手: 稲枝敬太(社会人)
見どころ: 大人の視点から描かれる、場所の記憶と失われた友情の回復。成瀬は脇役として登場。
第4章:線がつながる
時期: 高校1年生
語り手: 大貫かえで
見どころ: 承認欲求に苦しむ大貫が、成瀬を通じて自己受容へと向かう成長物語。
第5章:レッツゴーミシガン
時期: 高校2年生
語り手: 西浦航一郎
見どころ: 広島から来た西浦の初恋。琵琶湖の観光船ミシガンでのデートシーンが爽やか。
第6章:ときめき江州音頭
時期: 高校3年生の夏
語り手: 島崎みゆき
見どころ: 島崎の東京転居を知った成瀬が、初めて大きな動揺を見せる感動のクライマックス。
🌟 成瀬は天下を取りにいく・本屋大賞受賞の理由
『成瀬は天下を取りにいく』が2024年本屋大賞を受賞した理由は、以下の3点に集約されます。
1. 書店員が「売りたい」と思う普遍的な魅力
本屋大賞は全国の書店員が「いちばん売りたい本」として選ぶ賞です。
日々多くの本に触れ、読者のニーズを肌で感じている書店員が「面白い」と太鼓判を押すことで、読者には強い信頼感が生まれます。
成瀬あかりというキャラクターの魅力は、年齢や性別を超えて多くの人に響く普遍性を持っており、書店員が自信を持って勧められる作品だったのです。
2. 新人作家のデビュー作という新鮮さ
宮島未奈さんにとって本作はデビュー作でした。
新人賞受賞作家のデビュー作にスポットが当たったことで、書店員たちの「この本は面白い」「この本を売りたい」といった思いを形にする賞の趣旨を体現する結果となりました。
3. 読後の爽快感と前向きなメッセージ
重すぎず軽すぎず、読後に前向きな気持ちになれる作品であることが、幅広い読者層から支持を集めました。
「先のことなんてわからない」という成瀬の言葉に象徴されるように、未来への希望を持ち続ける姿勢が、現代社会を生きる多くの人々の心を捉えたのです。
📚 成瀬は天下を取りにいくの続編情報
2024年1月24日に続編『成瀬は信じた道をいく』が刊行されました。
成瀬の大学受験から大学生活を描いており、シリーズとして成長を追うことができます。シリーズ累計は80万部を突破し、2025年には第3作目の刊行も予定されています。
✨ こんな人におすすめ
- 中高生〜20代の若者
- 青春小説が好きな方
- 前向きな気持ちになりたい方
- 地方出身者・地元への愛着がある方
- 「普通」に縛られず生きたいと思っている方
- 本屋大賞受賞作を読みたい方
- かつての自分を思い出したい大人
📌 まとめ:成瀬は天下を取りにいくのあらすじを超簡単に|登場人物全解説と読者が面白いと感じる3つの理由を調べて
『成瀬は天下を取りにいく』は、一見すると「変わった女の子の奇妙な行動」を描いた物語に見えるかもしれません。しかし、その本質は「どう生きるか」という普遍的な問いへの一つの答えを示しています。
完璧でなくてもいい。周囲の目を気にしすぎなくてもいい。自分が信じたことに、全力で取り組んでいい。
そして何より、「今」という瞬間を全力で生きることが、結果的に「天下を取る」ことに繋がるのだというメッセージが、この作品の最大の魅力です。
読み終えた後、きっとあなたも成瀬のように、自分の「天下」を取りに行きたくなるはずです。
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